ネット通販の前払いによるトラブル 被害を防ぐには?

相談者 OKさん 18

 ボクは都内の私立大学に通う1年生です。大学に入って驚いたのは、みんながオシャレだってこと。というか、ボクはこれまでファッションなんて気にしたことがなくて、親が買ってきた服を何の疑問もなく着ていたんです。

 大学には、「校舎の壁を覆うツタの葉が秋に枯れる前にカノジョをつくらないと、4年間カノジョなしで終わる」という言い伝えみたいなものがあるんです。

 で、考えたんです。カノジョつくるぞって! これまで脇目もふらず勉強だけやってきて、4年間カノジョができないなんてあまりに悲惨ですから。

 それで、いつもオシャレにきめている同級生に教えてもらって、彼がはいている海外ブランドのスポーツシューズをまず買うことにしたんです。でも、大手のショッピングサイトではすべて売り切れだったため、インターネットで商品検索して、あるサイトを見つけました。これがとにかく安いんです。ショップで売っている半額以下の1万円なんですから。

 サイトには「在庫あり」とあったので、早速注文しました。代金は前払いと書いてあるので、指定されていた個人名義(中国系の名前でした)の口座にすぐに送金しました。個人名義というのがちょっと気になりましたが、個人でやっているお店なのだろうと、それ以上深く考えませんでした。それが失敗だったんですね。いまから思うと……。

 サイトの説明では、入金後すぐに商品を発送するということでした。でも、1週間たっても商品は届きません。サイトには連絡先の電話番号がないので、メールで問い合わせたところ、3日後には「送る」と返信があったのですが、その後も何も届きません。

 それで初めて確信したんです。詐欺サイトだって……。そこで「注文をキャンセルし、代金を返金してほしい」とメールを送ったところ、「このままでよろしいでしょうか。返金したらなかなかうまくいきません」という何やらおかしな日本語のメールが届くだけで、どうやら日本国内のサイトでもないようです。さらに強く催促したところ、「すでに商品は発送済み」という返信があったのを最後に、その後はまったく音沙汰なしです。

 安いといっても、苦労してバイトでかせいだお金です。このまま泣き寝入りするのはイヤですが、親にも言えないし、ボクは一体、どうすれば良いでしょうか。(最近の事例をもとに創作したフィクションです)

 

(回答)

国民生活センター越境消費者センター(CCJ)の開設

 独立行政法人・国民生活センターが3月5日、「『国民生活センター越境消費者センター(CCJ)』を開設します」と、サイト上で公表しました。

 インターネットの普及によって、海外ネットショッピングなど日本の消費者が国境を越えて海外の事業者と取引を行う機会が増えています。それに伴い、日本の消費者と海外の事業者との間のトラブル(いわゆる「越境消費者トラブル」)も増加しているそうです。

 この種のトラブルに対応するために消費者庁が2011年11月に開設した「越境消費者センター」には、開設以来3年間で1万件を超える相談が寄せられているといいます。今後も増加が見込まれる越境消費者トラブルについて恒久的に対応していくため、国民生活センターは本年度、消費者庁からこの事業を引き継ぎ、「国民生活センター越境消費者センター(CCJ)」を開設することにしたのだそうです。

 海外の消費者相談機関と連携し、海外に所在する相手方事業者に相談内容を伝達するなどして事業者の対応を促し、日本の消費者と海外の事業者のトラブル解決の支援をしていく方針で、本年6月1日からCCJのHP上のウェブフォーム、メール、FAXで相談を受け付けるということです。現状は海外の事業者が相手というだけで泣き寝入りを強いられることが多いと思われます。今回の新たな制度が有効に機能することを期待したいものですが、その前に自衛策はないのでしょうか。

ネット通販でのトラブル

 インターネットで申し込みをする通信販売(ネット通販)が広く普及して、それほどネットに詳しくない人も普通にネット通販を利用し、国内ばかりでなく、海外からも商品を普通に購入するようになりました。国民生活センターは、そうしたネット通販で、「前払い」をした場合のトラブルが特に急増していることを受け、2013年12月に「『インターネット通販の前払いによるトラブル』が急増!―個人名義の銀行口座への前払いはしない―」という文書を公表し、注意を促しています。

 私が今回の原稿を書くにあたり、こうした被害の話を周りにしたところ、意外と多くの人が友人知人などで被害にあった実例を見聞きしていました。実は見えないところで、そうした被害が拡大していることを知り、驚きました。

 被害金額もそれほど高額ではなく、リアルな店舗との間のトラブルでないことから対応手段もよく分からないため、相談者のように親などにも言えずに悩んでいる人も多いのかもしれません。

 後述のように、国民生活センターの資料では、前払いトラブルにおける送金先の大半が中国系(と思われる)の「個人名」口座であり、トラブルの交渉相手が日本国内にはいないことが疑われるという事情が一層、被害回復を困難にしていると思われます。ちなみに、前述した「消費者庁越境消費者センター」に寄せられた相談の中で多いトラブルは、「詐欺の疑い」「模倣品の到着」「商品の未到着」だったそうです。

 ネット通販はリアルの店舗と異なり、店員の視線を気にすることなく、他の多くの店と比較検討しながら商品を選ぶことができ、わざわざ出かけることなく自宅で注文することができるなど大変便利です。水や米など重くてかさばる商品の場合でも、玄関口まで運んでくれるので、最近では普段ネットを活用しない高齢者の方などにも徐々に普及してきているようです。ただ、日常的にネットを利用しているわけではない人が、従来の買い物と同じ感覚でネット通販を利用すると、思わぬ落とし穴に陥ってしまう可能性もありますから注意が必要です。

 今回の相談は、国民生活センターが以前から警鐘を鳴らしていたネット通販の前払いトラブルの典型例であり、同センターの公表資料をもとに対応や予防の仕方を検討してみたいと思います。

国民生活センターが掲げている主な相談事例

(1)商品が届かない
 【事例1】安いので注文したが、商品が届かない
 【事例2】他のサイトでは売っていないので注文したが、商品が届かない

(2)注文したものではないものが届いた
 【事例3】コピー商品が届いた
 【事例4】まったく違うものが届いた(スーツケース→携帯電話保護フィルム)
 【事例5】違う商品が届いたのに、そのまま使うよう言われた

(3)前払いするように誘導された
 【事例6】クレジットカード払いもできるとの表記があるが、結局はできなかった
 【事例7】代引きでの注文のはずが、注文後、前払いするよう電子メールが来た

(4)サイトや電子メールの表記の問題
 【事例8】サイトに連絡先の電話番号の表記がなく、住所は山の中
 【事例9】サイトから送られてきた電子メールの日本語がおかしい

(5)その他
 【事例10】サイトそのものが有名サイトをコピーしたニセサイトだった
 【事例11】銀行口座が凍結されていた

前払いによる具体的ケース

 これらの事例はいずれも前払いのケースですが、今回の相談の内容に類似するものとしては事例1、事例2が該当します。以下、それぞれの事例の内容を紹介しますが、いずれも非常に似ていることがお分かりになると思います。

【事例1】
 目的のゴルフクラブをネット検索し、この業者のサイトを見つけた。他の業者よりかなり安かったので、得だと思い、注文フォームに入力して注文した。
 代金は前払いとのことだったので、指定の個人名義の口座に注文の2日後に入金した。入金後すぐに商品を発送するとのことだったが、数日しても商品は届かなかった。業者にメールで問い合わせたところ、具体的な日にちをあげて「送る」とのことだったので待っていたが、その後いっこうに商品は届かなかった。「注文をキャンセルし、代金を返金してほしい」とメールを送ったが、「すでに商品は発送済み」との返信があっただけで、その後1週間たつが、商品は届かない。

【事例2】
 大手のショッピングサイトでは欲しいブランドの水着がすべて売り切れていたので、ネット検索し、欲しいものがヒットしたサイトで注文した。翌日注文承諾メールが来て振込先銀行の個人名口座を指定してきた。振り込んでからすぐに商品を送る、とサイトに記載されていた。
 支払い後すでに2週間ほど経っているが、届かない。何度かメールを送ったが返事がない。サイトに住所はあるが電話番号はなかった。

相談事例の分析から導かれる特徴

 国民生活センターは、上記のような問題となった前払いのネット通販に関する具体的な相談を分析して、以下のような特徴を挙げています。これらを知ることは、同種トラブルを避けるにあたって重要な判断要素になると思いますので、そのうち重要なものを紹介し、その特徴について説明したいと思います。

 (1)アクセスのきっかけは「商品検索」、「ブランド名検索」
 (2)申し込んだ理由は「安いから」、「欲しい商品が売っていたから」
 (3)サイトや連絡メールの日本語がおかしいものも。特に「会社概要」欄に注目
 (4)振込先の銀行は、ネット専用銀行と都市銀行が多い
 (5)口座名義は圧倒的に「個人名」
 (6)個人名口座の名義人は、7割超が「外国人名」と思われる

検索したところ、欲しい商品が安く売っていたので見知らぬサイトへ

 上記特徴の(1)(2)は、いずれもネット上の買い物における消費行動の特徴を端的に示しています。つまり、「店を選んでから商品を選ぶ」のではなく「まず商品ありき」で検索し、その中で諸条件を吟味して購入するという、ネットならではの買い物行動がここにはあります。まさに、この行動がトラブルの大きな要因となっているのです。

 本コーナー「ネットショップから支払い済み商品が届かない 返金請求はネットモールに?」(2012年3月28日)でも説明しましたように、インターネットが世界中をつなぐようになり、昔のように店舗を実際にいちいち探し回らなくとも、ネット検索だけで求めている商品を簡単に発見することができます。ネットショップで取り扱われている商品であれば、わざわざ買いに出かける必要はなく、スマホなどから注文して購入することが可能なわけです。

 これとは対照的に、リアルの世界では、初めて入った店舗で商品を購入しようとする場合、まずは店舗の構えや品ぞろえ、清潔さ、店員さんの対応などを総合的に観察します。その上で信用のおけるところかどうかを判断し、購入するかどうかを決断します。そもそも、外見からしていかにも危なそうなお店には入ることすらしないでしょうし、そういうお店ならニセモノを売りつけられるかもしれないとあらかじめ警戒するのが普通です。

 しかし、ネット上ではそのような見極めは困難です。ホームページ上の店舗は立派に見え、表示された店舗の紹介文に美辞麗句が並び立てられていても、実はアパートの一室で細々とやっていて、今にも倒産しそうな状況にあるかもしれません。一見、国内のお店のように見えるのに、実は海外から外国人が発信しているのかもしれません。

 ネットの場合、当該ショップや購入する商品について得られる情報は、あくまでも画面の中の映像や文字情報にすぎないのです。つまり、検索サイトで欲しい商品を探し出して、そこで当該商品が安く販売している旨が表示されていれば、基本的にはその表示情報だけで、購入の是非を判断するしかないのです。

 とりわけ、ずっと欲しかった商品の値段が安かったり、リアル店舗や大手のモールなどでは売り切れとなっているのにそのサイトだけに在庫があるような場合、消費者は普段よりも安易に買い物してしまったりする傾向があるわけです。そのサイトで、なぜそんなに安く売っているのか、なぜその店にだけ在庫があるのかといった疑念よりも、ずっと買うことができずに探していた商品を発見できたという喜びや期待が優先されてしまうのです。

 国民生活センターも指摘しているように、そもそも最初から商品を送るつもりのない悪質な業者は、どんな商品でも注文を受けることができますし、他のサイトではすべて売り切れのブランドスニーカーのサイズがすべてそろっているという、通常では考えられないような表示も可能ということも忘れてはなりません。悪質業者は商品の写真さえ用意すればよいのであり、コピー商品さえ用意する必要がないわけですから。

サイトや連絡メールの日本語がおかしい

 前記特徴(3)の具体例について、国民生活センターでは次のようなメール文を紹介しています。

 「銀行振込★安全のために秘密にする、E‐MAIL里告知する。会社に日本に銀行の口座名義人がいる。振り込み便利だ」「ご注文書は当店がもう取扱いました」

 おそらく、翻訳ソフトを使って日本語に変換した結果、このような日本語として不自然な文書になったのではないかと思われます。このような文書を見つけたら、国外にサーバーが置かれている、外国人が運営しているサイトではないかと疑ってかかるべきです。

 ほかにも、国民生活センターでは「サイト(特に「会社概要」の部分)に使用されている漢字をよく見ると、旧字体もしくは日本で使用されているフォントとは異なる字体となっていることや、サイト名も単なるアルファベットの羅列で読み方が不明のものも目立つ」と説明しています。

口座名義は、圧倒的に「個人名」

 次に特徴の(5)に挙げられているのが、相談の事例と同じく、送金先が「個人名」口座となっていることです。

 銀行振り込みの口座名義が分かったもの252件中、96%に当たる241件が、「個人名」口座であるということです。法人名や屋号などを含んだものは、11件(4%)に過ぎなかったというのです。また、そのうち外国人名と思われるものが72%(173件)と多く、外国人名の内訳は、中国系(と思われる)161件、韓国系(と思われる)7件などであるとのことです。ただ、最近は外国人名が多いことに変わりはないものの、日本人名の割合が高くなってきており、手口が変化しているとのことです。

これらケースにおける問題点

 国民生活センターでは、こうしたケースでの問題点として以下の諸点を挙げていますが、相談者のケースもその全てがあてはまるようです。

 (1)「前払い」はトラブルに対して金銭的な救済ができない
 (2)確実な連絡手段がないので、業者と交渉することができない
 (3)商品を送るつもりがなければ、どんな商品でも注文を受けられる
 (4)口座凍結までの時間をかせいでいる
 (5)法律で定められた表記がない

前払いをしてしまったら救済は困難

 国民生活センターは、前記問題点(1)で、「支払い前の契約を破棄したり解約したりするのに比べ、支払いが済んでいるものの返金は、相手に『返金』という行為をさせる必要があり、困難を伴う。前払いネット通販は、この点で、金銭的な救済が難しい」としています。

 ネットにおけるトラブルについて、不当な請求を受けているというパターンであれば、特段の対応をせず単に支払いをしないで放置するのが有効な対策であるという場合はよくあります。買い物のケースではありませんが、本コーナーの「4クリック詐欺、動画『見放題』にひそむワナ」(2013年5月22日付)では、不当な請求に対する対応として、私は「無視するのが基本」と説明しています。

 違法な請求について、請求者が裁判に訴えたり、警察に届けたりすることは通常考えられず、逆に不安になって対応してしまうと、相手の術中にはまるということは、ネットの世界ではよくあります。

 それに対して、いったん支払ってしまうと、仮に支払う必要がないと後日分かり、代金の返還請求をして相手に返金させようとしても打つ手がないということが往々にしてあります。この手の事案では前記問題点(2)にあるように、多くの場合、業者との連絡手段は電子メールのみというのが一般的です。この場合、業者の所在や運営状況などの実態は分からず、連絡手段すらありません。。こうなると、相手方と返金交渉をしようと思っても、接触すらできないのが現実なのです。

 とはいえ、直接の返金を実現できなくとも、詐欺に利用された銀行口座を凍結することで、そこからの返金を期待することは可能です。国民生活センターも、振り込んでしまって商品が届かなかったり、コピー商品が届いたりした場合、代金を振り込んだ銀行と警察に状況を相談することをアドバイスしています。事件化することで、銀行に問題の口座を凍結してもらうわけです。ただし、本件のような事案の場合には相談するタイミングが微妙です。

 国民生活センターも「『代金の振り込みを確認してから数日間後に発送します』という記載があれば、消費者は発送予定日までは口座凍結等のアクションを起こさない。また、違う商品が送られてくれば、それについてのやり取りの間も、口座凍結等のアクションを起こさない。こうして、銀行口座の延命を図り、その間に他の消費者とも取引をして、代金を振り込ませているものと思われる」と説明しています。

 今回の相談者も送金してからすでに10日以上が経過しており、それから手続きに入ってももはや手遅れになっている可能性が大きいと思います。結局のところ、この手の事案で返金を実現することは、国民生活センターも指摘するように、相当に困難であると考えた方が良いということです。

 ただ、自身への返金が実現できないとしても、違法に使われている銀行口座を凍結することは、今後の被害を防止するという観点からすれば、十分に意義のあることと思います。被害額が少ないから泣き寝入りせずに、国民生活センターのアドバイス通りに、代金を振り込んだ銀行と警察に状況を相談することをお勧めしたいと思います。

 冒頭で述べたように、6月1日から国民生活センター越境消費者センター(CCJ)が開設されますので、そちらの方に相談することも可能になります。注意してほしいのは、同センターが現在連携している海外の相談機関がアメリカ、カナダ、台湾、シンガポール、ベトナム、スペインなどであって、トラブル先の事業者等の所在地としてよく出て来る中国や韓国の相談機関とは連携できていないことです。前述のように国民生活センターの資料では、前払いトラブルにおける送金先の大半が「個人名」口座であり、そのうち72%を占める外国人名と思われるもののうち、中国系(と思われる)、韓国系(と思われる)がほとんどを占めていることを考えると、早急な連携体制の改善を期待したいところです。

法律で定められた表記とは

 なお、国民生活センターは、これら事案における問題点(5)として、「法律で定められた表記がない」ことを挙げています。特定商取引法は、ネット通販において事業者の住所と電話番号(確実に連絡が取れる番号)をサイト上に表示することを定めています。しかし、国民生活センターによれば、相談事例を見ると、「電話番号の表示がない」「住所の表示が不完全(番地がなく一部しか記載されていない)」など、定められた表示のないものや、表示されていても「住所が建物のない山奥」「電話をかけたらまったく関係ない人の家だった」など虚偽の表示と思われるものなど、法律を守っていないものが見られるとのことです。

 特定商取引法では、インターネットでの通信販売に対する規制も行っており、同法11条では、広告で表示しなければならない多数の事項を定めています。これらの確認はネット通販を利用する上でトラブルに巻き込まれないための重要な要素ですから、最後に、その点について説明しておきたいと思います。

 法律は、以下のような事項を表示するように定めています。

 <1>販売価格(送料についても表示する必要)
 <2>代金の支払時期・方法
 <3>商品の引渡時期
 <4>商品の売買契約の申込の撤回又は解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨を含む)
 <5>事業者の氏名(名称)・住所・電話番号
 <6>事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名
 <7>申込の有効期限があるときには、その期限
 <8>販売価格・送料以外に購入者が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額
 <9>商品に隠れた瑕疵かしがある場合に販売業者の責任についての定めがあるときには、その内容
 <10>所謂いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
 <11>商品の販売数量の制限等、特別な販売条件があるときには、その内容
 <12>請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
 <13>電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

最低限の情報は必ず確認を

 本件相談事案に関して言えば、まず「<2>代金の支払時期・方法」が重要となります。「代金引換」、「クレジット決済」、「銀行振込(前払い)」等の表示については、すべての代金支払い方法を表示することが必要です。

 国民生活センターの相談事例では、「ホームページにはクレジットカード決済が可能と出ていたが、申し込み画面ではクレジットカードの番号等を記載する欄がなく……銀行に振り込んでほしいと国内の銀行の日本人名義の口座番号を案内された」というものがあります。つまり、前払いするように誘導するために、利用できないクレジットカード決済を表示しているのであり、虚偽の表示をしたものとして、問題となり得ます。
 また、「<5>事業者の氏名(名称)・住所・電話番号」は、責任の所在を明らかにすることが目的です。個人事業者の場合には戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号、法人の場合には登記簿上の名称を記載することが必要で、通称や屋号、サイト名は認められません。
 国民生活センターでは、次のアドバイスを示しています。

 「相談を見ると、前払いのネット通販のトラブルは、屋号やネットショップ名を含まない、個人名だけの名義の口座への振り込みであるケースが圧倒的に多い。相談の急増にかんがみて、屋号を含まない個人名義のみの銀行口座への前払いでの振り込みはしないこと」

 また、住所については現に活動している住所、電話番号については確実に連絡を取れる番号を記載することが必要とされています。相談者の場合、サイトには連絡先の電話番号がないということであり、それだけを取っても問題があるということがお分かり頂けると思います。

 ネット通販を利用する際には、法律で明記されたこうした一定の表記については、必ずチェックをする習慣を身につけて欲しいと思います。

 

2015年04月22日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

 

 


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