広告との境界があいまいな記事、法律面で問題はないの?

相談者 T.Kさん

 日曜日の朝、気ままな一人暮らしの私は、いつものようにソファに腰をおろし、スマホでネットを見ていました。大リーグで活躍する日本人選手の記事に、芸能人のスキャンダル情報と、最近のまとめサイトは多彩なジャンルの記事がサクサク読めてとても便利です。見出しにつられていろいろな記事を読んでいるうちに、とあるニュースサイトに行き着きました。

 「健康」というジャンルの記事を見ていると、「生活習慣病になりやすい人の10の習慣」とか「そうだ、ハイキングに行こう」など、興味深いタイトルが次々と出てきます。その中で、ふと目にとまった記事を読んでみることにしました。それは「意外と簡単にできた脱メタボ」という見出しで、中身は、ある健康器具を特集したものでした。私は半年前の健康診断でメタボ判定が出たばかり。保健師さんには「若いんだから、もうちょっと運動しましょうね」と言われ、内心、「何か始めないとヤバイかも」と思っていました。

 記事を読むと、その健康器具を使えば、手軽にどこでも運動ができ、普段運動をしていない人でも容易に続けられるとのことでした。記事によると、その健康器具は私のように仕事が忙しく、休日もあまり運動をしない20代、30代の人の間で静かなブームになっているようです。これなら怠惰な私でもやっていけそうだし、こうしたニュースサイトで取りあげられるくらいなら安心だと思い、その商品の販売ページに行き、購入ボタンをクリックしました。

 その後、ネットに戻って、他のサイトを見ていたところ、その商品に関する、ほとんど同じ内容の特集記事を発見して驚きました。どうやら、通常の記事と思っていたものは、実は商品のタイアップ広告だったようです。私としては、何だか裏切られたような気持ちになりました。以前、インターネット上で口コミを装って、それを見た消費者を特定の商品やサービスに誘導することが問題になっているという記事を読みました。一見すると宣伝とは分からないため、「ステマ」と呼ばれていることも知りました。また、何年か前に、芸能人が業者から報酬をもらって、ブログで特定の商品を褒めて購買を促すという行動がステマだとして批判されたことも思い出しました。

 本当はタイアップ広告なのに、あたかも特集記事であるかのように見せるのは、このステマと同じではないでしょうか。法律面で問題がないのかも含めて教えていただければ幸いです(最近の事例をもとに創作したフィクションです)。

(回答)

ネイティブ広告とは

 今、相談者が指摘するような、記事などに溶け込む形で実施される「ネイティブ広告」と呼ばれる広告のあり方が話題になっています。

 「ネイティブ広告」はインターネット広告の一つの形態ですが、統一的な定義は存在しないようです。「ネイティブ」の言葉どおり、他のコンテンツとなじんで、自然で違和感がない体裁の広告というような意味になります。「広告らしさを感じさせない広告」という言い方もできると思います。

 ネット広告の業界団体である日本インタラクティブ広告協会(JIAA)では、「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す」と定義しています。

 また、知恵蔵miniでは、「ウェブサイトやブログ上に周囲の記事と同じ体裁で表示される記事型広告やタイアップ広告、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア上に投稿として表示されるスポンサー広告などがネイティブ広告に当たる」としています。その特徴としては、「固定の広告枠に配置されるのではなく、ウェブ媒体のデザインや構成に合わせてコンテンツや記事と同様の体裁で制作・表示される点」が挙げられています。

 従来のインターネット広告は、ウェブページ上に画像や文字情報などを貼り付ける「バナー広告」が典型でした。しかし、利用者にしてみると、インターネット閲覧中に自分の意に沿わない広告が突然、表示されるため、閲覧を妨害された印象を持ち、それにストレスを感じることも多く、必ずしも歓迎される存在ではありませんでした。これに対して、ネイティブ広告の場合には、記事と広告を自然に溶け込ませることにより、コンテンツと同じような見た目で表示されるため、すぐには広告だと分かりません。今回の相談者がスマホ上で見たものは、まさにそれに該当すると思われます。

ネイティブ広告の具体的内容

 例えば、JIAAでは、ネイティブ広告につき、次のような類型を挙げていますので、簡単に説明してみたいと思います。なお、これらがネイティブ広告の全てというわけではありません。

(1)「インフィード広告」
 「媒体コンテンツの枠内に表示する広告」のタイプであり、フェイスブックやツイッターなどのSNSのタイムライン上に表示される広告をイメージすると分かりやすいと思います。他にも、キュレーションメディア、ニュースアプリなどでよく利用されています。通常のバナー広告などは、サイドメニューやページのヘッダーなど、ウェブサイトのメインコンテンツの外に配置されることが多いですが、インフィード型では、コンテンツの合間に広告を挟み込むことで視認性を高めています。

(2)「レコメンドウィジェット」
 「媒体コンテンツページ内に設置するレコメンド枠に表示する広告」のタイプであり、ニュースサイトの記事下などに「あなたにおすすめの記事」や「この記事に関連する記事」などと表示される誘導枠の中に広告を表示する手法です。当該コンテンツを最後まで読んだ利用者が到達する地点に広告枠があり、その利用者が興味を持った広告をクリックするため、利用者の質は高いと考えられています。

(3)「タイアップ」
 「媒体社が広告を記事調に制作編集する広告コンテンツ」のことで、音楽や動画を配信する手法もあります。相談者が見たものは、こちらに該当すると考えられます。

ネイティブ広告の現状

 ネイティブ広告は、もともと米国で市場が広がったのをきっかけに、日本でも2014年ごろから情報サイトや各種アプリを提供する企業が相次いで参入しました。インターネットの広告市場は年々拡大し、電通の調査によれば14年の推計値は1兆円を突破し、ここ10年で約2.7倍に成長しています。その一方で、従来型のバナー広告は年々、クリック率が低下しており、あからさまな広告だと、よほど興味を持つ内容でない限りクリックされないという状況になってきています。

 ネイティブ広告は冒頭で指摘したように、コンテンツの中に溶け込むことで利用者に受け入れられ、クリックされやすいとして、その効果への期待が高まっています。例えば、あるネット広告企業が行った調査では、「インフィード広告」の市場規模は、14年には380億円でしたが、昨年は約2倍の768億円、20年には2478億円に達すると推計しています。

 その一方で、掲載方法や内容によっては、「ステルスマーケティング(ステマ)だ」と指摘され、消費者から反感を買ったり、不信感を持たれたりするリスクも存在しています。利用者にとっては、通常の記事との区別がつきにくいため、媒体自体の信頼性の低下につながるのではないかと指摘する声もあります。

 14年にスマートフォンを利用している10~60歳代の男女を対象に行われたある調査では、ネイティブ広告をクリックしたことがある448人に対して「だまされた気分になるか」と聞いたところ、約8割の人が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答しており、同様に「ストレスを感じる」「嫌悪感・不信感を持つ」などと回答した人が、それぞれ6割以上を占めています。

ステルスマーケティングとは

 相談者は、「本当はタイアップ広告なのに、あたかも特集記事であるかのように見せるのは「ステマ」と同じではないか」との疑問を持たれたようですが、確かにネイティブ広告は、やり方によってはステマとして糾弾されるリスクがあります。

 ステマとは「ステルスマーケティング」の略であり、宣伝であると消費者に悟られないように宣伝を行うことを意味します。レーダーに写りにくい戦闘機をステルス戦闘機と呼んでいますが、英語のstealthには「こっそりと、ひそかに」の意味があり、それに「市場調査、販売戦略」を意味するmarketingを付けたものが、ステルスマーケティングです。よくあるインターネット上の手法としては、一般消費者になりすまして口コミや記事を書くとか、一般人や芸能人のブロガーに宣伝を依頼するなどといったものが挙げられます。

 12年1月に起きた口コミグルメ情報サイト「食べログ」での「やらせ投稿事件」は、世間でも話題になりました。事件を契機に、食べログの運営会社は、飲食店が代行業者に依頼し、客を装って店に好意的な口コミを多数投稿させ、ランキング順位を操作していた旨を発表し、評価システムの改良など対策を強化しました。なお、このあたりの事情については、「口コミグルメサイト巡る法廷闘争、お店の情報は削除できないの?」(16年2月24日)で説明していますので、興味のある方はそちらをご覧下さい。

 また、同年12月には、有料入札制のペニーオークションサイトにおいて、架空入札を行い、落札できないようにして手数料名目で現金をだまし取ったとして、運営業者の男らが詐欺容疑で逮捕される事件が発生しました。同事件では、多数の有名タレントが落札していないのにもかかわらず、「サイトで高額商品を格安で落札できた」と虚偽のブログを書いて、謝礼を受け取っていたことが判明しました。

日本ではステマは規制対象外?

 こうしたステルスマーケティングと呼ばれる手法は、法的に問題ないのでしょうか。

後述のように、米国では広告主からブロガーに対して商品・サービスの無償での提供や記事掲載への対価の支払いがなされるなど、両者の間に重大なつながりがあった場合、広告主が法的責任を負うようです。現在の日本の法律では、相談者が指摘したようなケースで「広告には広告と表示しなければならない」といった類いのルールはありません。

 ちなみに、インターネット消費者取引の拡大に伴い、様々な類型のサービスが消費者に向けて提供され、利便性が向上する一方で、トラブルや消費者被害も拡大していることを受けて、消費者庁は11年10月28日、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(以下、ガイドライン)を公表しています。この中では、「口コミサイト」のビジネスモデルについて、次のように説明されています。

 「口コミサイトに掲載された口コミ情報は、インターネット上のサービスが一般に普及するに従い、消費者が商品・サービスを選択する際に参考とする情報として影響力を増してきていると考えられる。口コミサイトに掲載される情報は、一般的には、口コミの対象となる商品・サービスを現に購入したり利用したりしている消費者や、当該商品・サービスの購入・利用を検討している消費者によって書き込まれていると考えられる。これを前提とすれば、消費者は口コミ情報の対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、消費者による口コミ情報は景品表示法で定義される『表示』には該当せず、したがって、景品表示法上の問題が生じることはない。ただし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、または第三者に依頼して掲載させ、当該『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる」

 「商品・サービスを供給する事業者が、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させる場合には、当該事業者は、当該口コミ情報の対象となった商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は当該商品・サービスを供給する事業者の競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されることのないようにする必要がある」

 つまり、事業者が口コミサイトを利用した場合であっても、「商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合」に該当しなければ、原則として、景品表示法の問題が生じることはないということです。

 ちなみに、このガイドライン発表後、前述の「食べログやらせ事件」が発生しましたが、消費者庁が景品表示法(不当表示)に基づく調査を実施し、飲食事業者が口コミ代行業者に対し投稿を依頼したことが判明したにもかかわらず、実態よりも著しく優れているかのように投稿していたとは確認されなかったために、法的措置を見送っています。そのため、12年5月には指針の一部が改定されました。「問題となる事例」として、「商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること」という記載が追加されています。

 以上のように、現在、景品表示法で違反とされるのは、事実と異なる内容の広告を禁止するという考え方を前提としており、「広告には広告だと表示しなければならない」というような要請ではなく、ステルスマーケティングそのものが禁止されているわけではないということです。

業界団体によるガイドライン

 直接的な法規制は存在しないものの、15年3月には、JIAAがネイティブ広告について広告掲載基準ガイドラインを改定し、さらに「ネイティブ広告に関する推奨規定」として、取り扱い上の規定をとりまとめました。そこでは、ネイティブ広告の類型ごとに、広告であることを示す表記の方法や、広告主の明示の必要性とその方法、広告審査に関する規定が示されています。

 JIAAはネイティブ広告について、「媒体社が編集する記事・コンテンツであると、利用者(消費者)が誤認することのないよう、広告の責任の所在を明確にするために、広告であることと、広告主体者が誰であるのかを明確にすることが必要である」と指摘しています。さらに、ネイティブ広告を掲載・配信する事業者は、ガイドラインの趣旨を十分に理解した上で、それぞれのサービスの特性に応じ、推奨規定に示された原則に沿って、広告表記および広告主体者の表示をするよう呼び掛けています。

 また、口コミに関するマーケティングの業界団体である「WOMマーケティング協議会」も、そのガイドラインにおいて、情報発信者と商品・サービスの販売者の間に金銭・物品・サービスなどの授受がある場合には、「関係性がある」ということを消費者に明示しなければならない、と呼び掛けており、さらには、その関係性の中身について、具体的に詳細を示すことが望ましいとしています。

 いずれのガイドラインも業界の指針を示すものであり、各社の自主規制を前提とし、強制力はありません。ただ、インターネット広告はまだ歴史も浅く、他のメディアと比較すると消費者の信頼性が低いとの調査結果もある中では、いったんステマとして問題視されれば、掲載していたメディアや広告主が大きなダメージを受け、信頼回復に時間がかかるのはもちろん、ネット広告全体に与える影響も甚大じんだいなものとなることが予想されます。そこで、JIAAなどは、会員各社に対して遵守じゅんしゅを強く推奨し、他の業界団体へも連携を呼び掛けています。

米国での規制

 ネイティブ広告の火付け役となった米国でも規制が存在します。

 米国のオンライン広告の業界団体、インタラクティブ広告協会(IAB)の制作した「ネイティブアド・プレイブック」(13年12月)には、広告明示の必要性が明確に記載されています。また、連邦取引委員会(FTC)は、広告主からメディアに対して商品・サービスの無償での提供や記事掲載への対価の支払いがなされるなど、両者の間に重大なつながりがあった場合、広告主のこのような方法による虚偽の又はミスリーディングな広告行為は、FTC法第5条で違法とされる「不公正または欺瞞ぎまん的な行為や慣行」に当たり、広告主は同法に基づく法的責任を負うとの解釈指針を示しています。

 さらに、FTCは昨年12月22日、ネイティブ広告について具体例を数多く挙げ、どういったものが該当するかを定義し、該当する場合には広告であることをどう明示すればよいかという新たなガイドラインを公開しました。その中では、広告表記を目立つ場所に掲げることや、広告であるということを消費者にきちんと伝えるために、あいまいな表現を避けるようにすることなどが示されています。

 このFTCによる新たなガイドラインは、従来のIABのガイドラインより一歩踏み込んだ内容となっており、話題を集めています。米国でも、より強い規制の必要性が意識されてきているということです。

編集記事とタイアップの違い

 今回の相談は、通常の記事と思っていたものが、実は商品のタイアップ広告であったというケースです。

 ちなみに、新聞、雑誌、テレビなど、他のメディアにおいては、広告記事に広告と明記するルールがすでに徹底されています。テレビ番組では「提供社」としてクレジットが出ますし、新聞では記事風の商品紹介ページの欄外に「広告特集」などと表記されていることから、消費者は広告であることを容易に見分けることが可能です。

 しかし、インターネットではそのメディア自体の性質から、記事なのか広告なのかを利用者に分かりづらくすることが容易なのも相まって、相談者のように「サイトの記事と思っていたのに広告だった」というケースがまだ見受けられます。

 この点、JIAAは、ネイティブ広告の定義と用語解説において、「編集記事」と「タイアップ」の定義を明確にし、それぞれの広告表記などの対応を次のようにまとめています。

 「編集記事」とは、「広告主や広告代理店等から金銭等の授受が直接的にも、間接的にもなく、媒体社が自らの意思で企画、編集、制作された記事」を意味し、金銭の授受があった場合や、広告出稿の見返りとして執筆された記事などは、編集記事とならないとしています。

 これに対し、「タイアップ」には、「タイアップ広告」と「スポンサードコンテンツ」の2種類があり、前者は「媒体社が記事調に制作編集する広告コンテンツ」を指し、後者は「コンテンツそのものは媒体社の編集側が制作し、そのコンテンツおよびそれらが掲載されているページなどへ広告主がスポンサードするもの」とされています。

 「タイアップ広告」の場合は記事調に作られたコンテンツ自体が広告であるのに対し、「スポンサードコンテンツ」の場合は、コンテンツはあくまでも編集側の制作で、広告主の商品などを説明する広告コンテンツではないという違いがあるわけです。

 従って、ガイドラインにおいても、「タイアップ」の場合は広告表記を行い、広告主体を明示することが求められているのに対し、「編集記事」の場合には、それらは求められていません。なお、「タイアップ」の場合、「媒体の性質や広告の態様に合わせ、広告であることが明確にわかる表記を行う。表示する位置、大きさ、色、形状など、わかりやすい表示となるよう留意する」「媒体社と広告主体者の関係がわかるよう両者の名称を明示する」などと規定されています。

広告表記なしでトラブルに

 日本でもネイティブ広告に対する関心が高まってきており、JIAAによるガイドライン公表後には、クレジット表記(広告であることを示す目印)のない広告を出していたとして、大手広告代理店が謝罪に追い込まれるといったケースも出てきています。

 昨年5月、ある大手ネット広告代理店が、広告であることを示すクレジット表記のないネイティブ広告を、その子会社が販売していたことが社内調査で判明したと発表しました。同社は、ニュースリリースで、自らがJIAAの会員企業でガイドラインの策定にも携わっていることに触れ、「ネイティブ広告を閲覧するユーザー保護とネイティブ広告自体の信頼性確保のため、ネイティブ広告においてクレジット表記を遵守すべき立場」として、「グループ会社を含めた社内教育・管理が十分に行われていなかったために、このような問題が発生したことを深く反省し、おびすると同時に、再発防止に努め、コンプライアンス体制の強化と意識向上に努めてまいります」と表明しています。

 また、同年7月末には、ヤフーニュースが、記事提供契約を結ぶ一部のニュース提供社がクレジットのない広告記事を配信している可能性があるとの報道を受け、そういった配信元を排除するなどの対策強化に動き出しました。

 すなわち、広告であることを隠し、通常の編集記事であると誤認させた広告記事については、「読者を裏切るステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」)の一種であり、優良誤認として景品表示法違反に問われる可能性もある悪質な行為」とみなし、読者や広告主の信頼関係を損ない、サービスそのものへの信頼を大きく揺るがす重大な問題として、これらの行為について「積極的に排除し、撲滅したい」と説明しています。ヤフーは、配信元との契約で、広告表記の有無にかかわらず記事広告やタイアップ広告を配信することや、記事中のリンクから広告に誘導することを禁止しており、これまでも違反があった場合は契約を打ち切っているとのことです。同社としては、「今後も、契約違反が明らかになった場合は、契約解除はもちろんのこと、ヤフーニュースが信頼を損なうことによって被った損害や信頼回復のために要した費用の請求、その他法的措置を含む厳正な対処を行います」としています。

メディアリテラシー

 ネイティブ広告は、まだ新しい分野であって、広告業界にも自主規制の動きが出てきたばかりです。大手企業であれば、この規制の流れに応じて、すぐに対応を取ることも可能ですが、広告事業者の中には規模が小さく、業界団体に所属していないところも少なくありません。媒体社からも、「広告」と表記されていると、クリックされにくくなるため、規制に対して抵抗があるという声もあるようです。

 広告業界の自主規制となっている現状では、今後も利用者は、広告表記がないものや、小さく見落とすような場所にしか広告と表記されていないようなネイティブ広告に接する機会も多いと予想されます。従って、今後、利用者が安心してネットから情報を得られるような体制を構築していくことはもちろん重要です。その一方で、利用者としては、メディアの情報を鵜呑うのみにせず、主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する「メディアリテラシー」がますます求められてくると思われます。

 今後、ネイティブ広告に関する状況が悪化するようなことがあれば、法規制が強化される可能性もささやかれており、広告業界の自主規制がきちんと働くのか、その動向を見守っていく必要があると思われます。

 

2016年05月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

 

 


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